神保町花月のマンボウやしろ月間第四弾ランパンプス主演「ビリビリ始まる」

だいぶ考えこんで塩漬けにしていたんです2月の舞台をこねくりまわし続けてそろそろ時間切れなので公開します。
ストーリーネタバレ含むので注意。

マンボウやしろ月間第四弾。ランパンプス主演「ビリビリ始まる」
第三弾「目を閉じて、、、、よ。」で油断してたんですが、やりましたね。
最後にぶっこんできましたねやしろさん。
これねーーーー問題作だと思います。
これはこれで良いっちゃ良いのだけど、正直なんというか、食い足りないというか。書ききれてないというか。
いやランパンプスや他の若手を盛り上げるぞ!という目論見からすれば成功なんでしょうが
私の期待値が高すぎたというかちょっと違うベクトルのものを求めてしまってたというのもあるのですが。
いろいろ言いたいことはある。

『ビリビリ始まる』
脚本・演出:マンボウやしろ
出演者:フクロトジ、セブンbyセブン、ハンマミーヤ、カゲヤマ、ランパンプス 他
あらすじ:政府関連の施設に幽閉されている特異体質の男の子。そのもとに心優しき科学者達が集まり、時は静かに運命の日を向かえる。
チケット:前売:2,000円/当日:2,300円
公演日:1/31日(木)〜2/5日(火)
公演時間:31日(木) 1日(金) 4日(月) 5日(火):19時開演
2日(土):16時 19時開演
3日(日):20時開演

「政府関連の施設に幽閉されている特異体質の男の子。」というあらすじから、2011年のカリカ単独『オリコント』内の1コント「発電坊や」*1を想像してしまっていたのですが、
「発電するという特異体質で政府関連施設に実験対象として幽閉されている」というベースは同じでも、ほぼ別ものでした。

長年「檻」の中に監禁されていたため、精神年齢は子供のままで身体は大人だった発電坊やとは違い、
施設から出たことはないものの幼稚園のような子供らしい部屋(AKIRAのタカシやキヨコがいたような部屋)の中で慈しまれて育てられている8歳のヒカルは、子供らしい子供でした。
置かれている状況も受けている実験内容の過酷さも比較にならないほど違います。
「君が発電しないと日本の人たちがみんな困るんだ」と理不尽に日本国を背負わされて受難に耐えていた発電坊やに比べると
「研究の成果が出ればいつか外に出れるようになれる」ことをゆるくモチベーションにしてるだけのヒカルは何も背負ってないし甘やかされすぎだし使命感なさすぎです。普通にただの無邪気な男の子。

これは震災直後、切羽詰まった状況だった『あの頃の日本』と、それから二年が経過してやや平静を取り戻した『今の日本』の置かれた状況の差というのもあるし、
やしろさんの語りたい内容の変化、心境の変化も関係しているのかもしれません。(原発反対というエッセンスは少し入っていたようですが)

やしろ劇団旗揚げ公演

やしろ劇団は昨年の7月に他の座長(ニブンノゴ!宮地さん、カナリア安達さん、サカイストまさよしさん)との間でドラフトを行い、メンバーを選抜して作られた劇団です。
(ドラフト選抜って言っても、やしろさん指名のメンバーは1位から最後まで他とまったく競合しなかったのですが・・(笑))
新座長!?が激論! 4芸人が劇団を結成! - ナビブラ神保町
やしろさんがNSC講師をしていた16期生の中で、たまたま作家さんの推薦で「エクセレント!」に出演したランパンプス。やしろさんが彼らを「華がある」と見出し、やしろ劇団のメンバーは「ランパンプスをスターにする」ことを目的に選べれ、組まれた人々だとドラフト時に明言していました。
今回もいきなりのランパンプス主演。一番若手なのにセリフ量も多いし大変だったと思いますが、ランパンプスのふたりが可愛く、輝くように考えられて組まれてました。
立ち上げ公演ということもあり顔見世興行的な色彩も強く、各コンビの持ちネタや特技が随所に組み込まれていました。*2
なので基本研究所でヒカルと研究所員がお遊戯会を繰り広げるというのが芝居の大半を占めるという…。これはこれで楽しかったんですが、もうちょいストーリーを深めて欲しかったという気もしました。


(他にももっとツッコミたい点はあるのですが)大きくまとめて下記2点が納得できませんでした。
以下、見た人にしかわからない、共感を呼ばないかもしれないつぶやきメモ。

納得できない①「なにやってんだ太郎」

太郎がちょーー役立たず。なんせ7年も研究しといて「すっぱいものや辛いもの食べた時の方が発電量が多いみたいなんです」程度しかわかってない。しかも「ヒカルはまだ子供だからあんまり辛いものは食べさせたくなくて…」でへへ。とか。甘やかし過ぎにもほどがある!
なんの成果も出していない!発電坊やにタバスコ1本入ったカレーを食べさせたドSなでんでんさんを見習って欲しい。

研究者としての成果も出さずヒカルのおもりだけで良くリストラされず研究所にいられたもんです。
マヤ暦による新人類の進化の可能性とかよっぽど所長と副総理のほうが詳しい。なにやってんだ太郎。
ヒカルが瀕死の時、「助けろよ!」とか医療センター員を責めてましたが、そこらへんもお前の管轄だろって思いましたね。自分の研究対象の体調変化でなに他人を責めてんだ。お前が責任者だろうがよ。

あ、演じてたランパンプスは頑張ってたと思った。そういう脚本なんだし。やしろさんは演者さんにも内容説明しないことで定評があるので。(その後のトークライブなどで「あれはああいう意味なんだよ」「えーーー!」みたいなやりとりをよく聞く(笑))

納得できない②「結局なんで死んでなんで生き返ったの?」

本作のクライマックスから終盤の流れがどーにも納得行かない展開でした。
愚かではあるが息子を愛していたバカ総理が支持率低下にトチ狂って、ヒカルを選挙戦の道具にしようと研究所から無理やり銃で脅して連れだそうとします。(わざわざみんなのいる前で。息子のいる前で銃を取り出す。頭がどうかしているにしてもどうかしすぎている)
それを丸腰で止めようとした?太郎。止められるはずもなく太郎の身に危険が。
ヒカル「たーちゃんに手を出すなー!」絶叫
太郎「やめろヒカル!暴走するぞ!」なんか電気がビリビリいってる効果音。
イヤボーンの法則?*3しかし停電した程度で人々には何事もなく、ヒカルは力を失い崩れ落ちる。

そこから数日生死をさまようヒカル。荒れて八つ当たりする太郎。
↑結局なんで瀕死になってるの?マヤ暦が終わるせい?総理は関係ないの?

みんなが見守る中ヒカルの心電図の音が弱くなり、止まる。太郎の絶叫。
しかしヒカルの身体に触れるとかすかに静電気が…「ヒカルは生きている!」←?
「なんかおなかすいちゃったー!」と元気に生き返るヒカル。←??
新しい人類の進化だ!ヒカルに触れられると旧人類のみなさまも発電能力を持つようになる←そんなバカな!?
わーいわーい、とみんなでハッピーに踊って終了。←???

この時点でかなり死んだ目で「・・・・」となっていた私。マンボウ…。

しかし物語にはまだ続きがあったのです。どんでん返し。

輪廻転生?

OP映像で映しだされた以下の文章

人間は死んだ時に心の高いステージに達してた場合にのみ
人間へと輪廻転生できることが科学的に証明されている。

心の高いステージとは…

いきなり何ですかコレは…? マンボウいよいよ大丈夫か?と不安とゾクゾク感を煽ったこの内容。

心の高いステージとは…?これが、上記のお遊戯会終了後のEDVにて明らかになりました。

心の高いステージとは…

我欲を捨て、誰かのためだけに生きる
覚悟を決めることである。

EDV終了後、舞台が明転すると、白いパジャマを着て、目を閉じ椅子に座っている太郎。頭には機械が取り付けられている。
「元研究所長だが何かのミスのせいで清掃員になった」はずの父親が白衣の研究所長の姿で見守っており、
「ようやく太郎は心の高いステージに到達し、人間に輪廻転生できる状態になった。私の研究、生きる仕事はもう終わった。」と付き従う副所長(本編では研究所長)に言い、太郎にオモチャのチャチャチャを歌って聴かせる。

終幕。

なんと今までの出来事はシステムを使って構築された、太郎の脳内の世界の出来事!
事故に会い、脳だけ生存状態となっていた太郎を「心の高いステージ」に到達させることを目的に作られていた仮想現実世界内の話だった。
自らの危険を省みず総理からヒカルを守ろうとした太郎は心の高いステージに到達した。
研究所長の目的は達成されたのだった。


なるほど、作り話の、仮想世界の出来事だったのねー。と思ったら、
「納得出来ない①」「②」も、なんとか納得できる気になって来ました。
だって、太郎のための作り話だしね。

それでも一抹の「・・・・」という感情は残るのですが。
トークライブで「最後の展開は後からつけたした。他の物語でラッピングするみたいに2つの見方ができるのも面白いと思って(大意)」と言っていましたが、たしかに。
このどんでん返しがないと私はだいぶ納得できない感じでした(笑

面白い題材なのにもったいない。
「研究材料/人体実験」「輪廻転生」「人類の進化/滅亡」「マヤ暦」詰め込みすぎかな…。
研究材料と輪廻転生だけでよかったんじゃないかな…。

旗揚げ公演に「オリコント」内の一部を持ってきたということは、研究所で監禁されている少年というモチーフにやしろさん思い入れがあるのかな。
また違うパターンでも見てみたいです。

次回作は「パンダちゃん」とのことで、ランパンプスよっちゃん(と、セブンbyセブン玉城さん)がパンダ役で、寺内さんが飼育員をやるそうです。(なんかモチーフあざとい気がしますが嫌いじゃないよ!)
5月公演予定とのことで、こちらも楽しみです。

パンダちゃん

パンダちゃん

(追記)

実況感想集はこちら↓
神保町花月マンボウやしろ月間第四弾「ビリビリ始まる」感想集 - Togetter

劇中で研究所員たちがタバスコカレーを食べるシーンがあるのですが、「オリコント」を見ていたカリカファンが総じて「入れるタバスコの量が少ない。物足りない」と不満を漏らしていたのを知ってか知らずか、
千秋楽では演者さんたちが一本いっていたのでなんだか申し訳ない気持ちになりました…。
なんかごめんね…きっとカリカとカリスタンの方が頭がおかしいんだと思う…。
林さん演じるでんでんさんが偉大すぎた。

*1:カリカ単独2011「日本ニッポンコント〜人間は爆発だ〜』 - Sugarsの日記

*2:フクロトジの「顔パンパンマン」とか「トラ力士」最初はナンジャコラと思っていたのに、最終日は結構心待ちにしちゃってたもんね…露出と接触頻度って重要なんだと再認識。

*3:「サルでも掛ける漫画教室」の。『エスパーまんがにおける法則。ヒロインがピンチに陥り「イヤァッ!」と叫ぶと眠っていた「能力」が覚醒し敵の頭が「ボーン」と破裂する。読者に超能力の威力を見せ、話を先に進めるためのわかりやすいパターン。』from wikipedia